「正社員を続けるべき?それともパートに変わるべき?」
「パートだと損している気がする。でもフルタイムは無理」
子育て中の薬剤師にとって、避けて通れない悩みです。 雇用形態の選択は、収入と時間の両方に関わるのに、比較の方法を知る機会がありません。
この記事では、薬剤師の正社員・パート・派遣を、収入と働きやすさの両面から比較します。
読み終えれば、「なんとなく正社員」「なんとなくパート」ではなく、自分のライフステージに合った雇用形態を根拠を持って選べます。
先に結論です。 「パート=損」とは限りません。 薬剤師のパート時給は高水準なので、雇用形態の名前ではなく、時給換算・時間の自由度・保障・契約期間という4つの物差しで比べると、判断が変わることがあります。
判断の手順|3ステップで比べる

比較の進め方は、次の3ステップです。
ステップ1. 今の実質時給を出す
年間の額面総額(賞与・残業代込み)÷年間の実労働時間。 今のあなたが「1時間いくらで働いているか」。月給や年収の額面ではなく、この数字が出発点になります。
計算の詳しいやり方と、相場との比べ方はこちらにまとめています。
👉 薬剤師の年収相場|自分の給料が「安すぎないか」を確かめる方法
ステップ2. 希望の働き方で試算する
「時給◯円×1日◯時間×週◯日」で、変更後の月収を出します。 このとき、賞与・退職金・昇給の有無も含めて年間で比べてください。
ステップ3. 保障と契約期間を確認する
社会保険への加入、契約期間の定めの有無、更新の基準。 目先の手取りだけでなく、この3点まで見て初めて比較が完成します。
以下、3つの雇用形態それぞれの特徴を見ていきます。
3つの雇用形態をざっくり比較
大事な前提として、賞与・退職金・昇給などの制度は雇用形態で自動的に決まるのではなく、職場ごとの就業規則や契約によります。 パート・有期雇用でも、賞与・退職手当・昇給の有無は雇用時に明示されるルールです。契約前に必ず確認してください。
| 正社員 | パート | 派遣 | |
|---|---|---|---|
| 収入の型 | 月給が中心 | 時給が中心 | 時給が中心 |
| 勤務時間 | フルタイムが中心 | 短時間勤務を選びやすい | 契約条件による |
| 雇用期間 | 無期雇用が多い | 無期・有期の両方 | 派遣元との契約による |
| 賞与・退職金 | 制度がある職場が多い | 職場により異なる | 派遣元により異なる |
| キャリア | 管理薬剤師等を目指しやすい | 職場・業務内容による | 派遣元の制度・経験内容による |
| 社会保険 | 原則加入 | 労働時間・勤務先の規模等による | 派遣元で加入要件を判定 |
正社員|長期的な収入とキャリアを確保しやすい

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年調査)によると、短時間労働者を除く薬剤師の年収換算額は約567万円です(年間賞与等を含む計算値)。 ※この統計区分は「一般労働者」で、正社員だけを集計した数字ではありません。
一般に、勤務時間が長く、賞与・昇給・退職金の制度がある職場で働く正社員は、長期的な収入を確保しやすい立場です。 ただし制度の有無・水準は職場によって異なるため、「正社員だから安泰」と決めつけず、昇給実績と賞与の支給実績は確認してください。
弱みは、時間の融通です。 残業、土曜出勤、店舗異動。 「17時に必ず帰る」を正社員のまま実現するには、職場の体制(人員の余裕)が欠かせません。
働きやすい職場を見極める視点は、こちらの記事にまとめています。
👉 時短・ブランクありの薬剤師が転職で失敗しない方法|職場と支援サービスの選び方
向いている人:収入とキャリアを優先したい人、時短制度を使える体制の職場に勤められる人
パート|時給換算では「損」とは限らない

「正社員からパートになったら収入が激減する」。 そう思われがちですが、時給換算で比べると景色が変わります。
薬剤師のパート等(短時間労働者)の平均時給は2,540円です(令和7年調査・所定内給与)。 短時間労働者全体の平均1,518円を、約1,000円上回る水準です。
具体的に計算してみます。 時給3,000円で1日6時間、週4日働いた場合、月平均で約31万2,000円(年間52週で計算。4週間で計算すると28万8,000円)。 一方、正社員で残業を含めて時給換算したら2,200円だった、というケースもあります。 「雇用形態」ではなく「1時間あたりいくらで働いているか」で比べてください。
一方で、注意点もあります。 賞与・退職金・昇給は職場により異なります(統計上は短時間労働者にも平均で年10万円弱の賞与等が出ていますが、ない職場も多いです)。 長期の生涯収入では、フルタイムの正社員に届かないのが一般的です。 「今の数年は時間を優先し、状況が変わったら正社員に戻る」という期間限定の選択として考えるのが現実的です。
向いている人:お迎え時間などの制約が大きい今の時期を乗り切りたい人、時給の高い職場を選べる人
派遣|高時給の可能性がある働き方、ただしルールを知って使う

派遣薬剤師では、パートより高い時給が提示されることがあります。 3,000円を超える求人も見られますが、地域・時期・勤務条件によって大きく異なるため、同じ地域・同じ業務内容の求人同士で比較してください。
強みは、勤務場所・期間・勤務時間が派遣契約で明示されることです。
知っておくべきルールは下記の2つです。
- 期間の上限:同じ職場の同じ部署で働ける期間は原則3年までです(派遣元で無期雇用されている場合などの例外あり)
- 病院への派遣は原則不可:医療機関での医療関係業務への派遣は原則禁止されています(一部例外あり)。薬剤師派遣の主な働き先は調剤薬局等です
向いている人:高時給を優先したい人、期間を区切って働きたい人、環境の変化に抵抗がない人 向かない人:1つの職場に腰を据えたい人、人間関係を積み上げたい人
扶養内で働きたい人が押さえる3つの目安

パートを選ぶとき、扶養の範囲を意識する人もいると思います。 制度は2025〜2026年に大きく変わっており、古い「103万円・106万円」の知識のままだと判断を誤ります。 要点だけ挙げます。
- 本人の所得税:2026年分から、給与収入178万円以下が1つの目安です(住民税・配偶者控除は別の基準です)
- 自分の社会保険加入:2026年10月に賃金要件(月額8.8万円)が撤廃予定ですが、週20時間以上・勤務先の規模などの要件は残ります
- 家族の扶養:契約上の年間収入見込みで原則130万円未満が目安です(他の条件もあります)
いずれも条件が複雑で、勤務先の規模や契約内容で結論が変わります。 扶養内で働きたい人は、契約前に勤務先と加入している健康保険の保険者に必ず確認してください。エージェント経由なら、担当者にも「扶養内希望」と明確に伝えておくと、条件に合う求人を絞ってもらえます。
ライフステージ別|私のおすすめの考え方
- 子どもが未就学(送迎・発熱対応が最優先) → 時間の自由度を最優先。高時給パートで「時間を買う」時期と割り切る
- 子どもが小学生(時間が少しずつ戻る) → パートのまま日数を増やすか、時短正社員への切り替えを検討する分岐点
- 子育てが一段落(収入とキャリアを再構築) → 正社員復帰の好機。ブランクや年齢を理由に諦める必要はありません
- 扶養内で無理なく働きたい → 上の3つの目安を確認したうえで、契約前に勤務先へ相談
大事なのは、雇用形態は一度決めたら終わりではないということです。 ライフステージに合わせて、パート→正社員、正社員→パートと乗り換えていくのが、薬剤師という資格の使い方です。
そもそも「今の職場を続けるべきか」から迷っている人は、こちらの記事で不満の中身を仕分けてみてください。
👉 薬剤師を辞めたい|今の職場を続けるべきか、転職すべきかの判断基準
雇用形態を変える転職で、サービス選びに注意したいこと

正社員からパートへ、パートから正社員へ。 雇用形態を変える転職では、1つ確認したいことがあります。
主要な転職支援サービスは、正社員・パート・派遣を幅広く扱っています。 ただし、その働き方での相談・紹介の実績が豊富かどうかはサービスによって差があります。 「対応しているか」ではなく「実際にその条件での紹介事例があるか」を登録時に聞くのが、確実な見極め方です。
重視することからサービスを選ぶ方法は、こちらの記事にまとめています。
👉 【ママ薬剤師向け】転職エージェント4社比較|時短・ブランクありでも失敗しない選び方
よくある質問

Q. パートから正社員に戻るとき、パート期間はマイナス評価になりますか?
パート勤務だったこと自体で必ず不利になるわけではありません。評価は勤務期間・担当業務・知識の更新状況によります。パート期間中に任されていた業務を具体的に話せるようにしておくことが大切です。
Q. 時短正社員という選択肢はどうですか?
賞与や社会保険を維持しながら時間を確保しやすい折衷案です。法律上、3歳未満の子を育てる労働者には短時間勤務制度が用意されます。3歳から小学校就学前は、2025年10月からの制度で、職場が用意する柔軟な働き方の選択肢に短時間勤務が含まれるかを確認してください。給与・賞与が勤務時間に応じてどう変わるかの確認も必要です。
Q. 派遣は「腰掛け」と見られませんか?
派遣経験だけで一律にマイナス評価されるわけではありません。ただし短期間の職場変更を繰り返している場合は、派遣を選んだ目的と得た経験を説明できるようにしておきましょう。
Q. 扶養を外れて働くのは損ですか?
一概には言えません。扶養を外れて働く方が世帯の手取りを増やせる場合もありますが、社会保険料・配偶者手当・保育料などで結果は変わります。個別の試算が必要なテーマです。
まとめ|物差しは1つじゃない
- 判断の手順は3ステップ。①今の実質時給を出す→②希望の働き方で試算→③保障と契約期間を確認
- 比較は雇用形態ではなく、時給換算・時間の自由度・保障・契約期間で
- 賞与・退職金・昇給は職場ごとの制度。契約前に必ず確認する
- パートは「損」ではなく、時期を区切った選択(平均時給2,540円は短時間労働者全体+約1,000円)
- 扶養の目安は3つ。ただし条件が複雑なので、契約前に勤務先と保険者へ確認
- 雇用形態はライフステージで乗り換えるもの
「正社員じゃなきゃ」も「パートしか無理」も、思い込みかもしれません。 数字で比べて、今の自分に合う形を選んでください。
働き方を変える転職を考えるなら、サービスの選び方はこちらからどうぞ。
👉 【ママ薬剤師向け】転職エージェント4社比較|時短・ブランクありでも失敗しない選び方
※本記事の統計値は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年調査)に基づく概数です。税・社会保険の制度は改正が続いているため、実際の判断は最新の公的情報(国税庁・日本年金機構等)と勤務先への確認を併用してください。
この記事はInstagram「薬剤師転職サポーター なゆり」の関連記事です。転職の悩みはInstagramのDMでも受け付けています。